企業の取り組みを包括的に捉えて持続可能性を評価し、投資する動きが出てきた。ESG債の新たな枠組みとして広がる可能性がある。

 豊田合成は、ESG推進を目的とした資金調達のため、独自の「サステナブル&ポジティブインパクト・ファイナンス フレームワーク」を策定した。国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)のポジティブインパクト金融原則(PIF原則)の他、国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則など複数の原則に適合しているのが特徴だ。策定したフレームワークを活用し、2024年の社債発行を計画している。

 策定を主導した同社総合戦略本部の蜂須賀正義副本部長は、「個別の事業ではなく、当社全体が社会にどのように貢献しているかを幅広いステークホルダーに知ってもらうため、新たなフレームワークの開発に取り組んだ」と話す。

企業のESGを包括的に評価

 なぜ、独自のフレームワークが必要なのか。開発を支援した野村証券サステナブル・ファイナンス部の林田稔エグゼクティブ・ディレクターは次のように話す。

 「ICMA原則は企業のESG要素の一部を分析するもので、企業の持続可能性を評価するには十分ではない。企業の取り組みを包括的に捉えるPIF原則に適合することでICMA原則を補完し、サステナビリティ戦略に基づく資金調達が可能なフレームワークを策定できる」 例えばグリーンボンド原則では、再生可能エネルギーやクリーン輸送などの事業区分に基づいて対象プロジェクト(資金使途)を選定する。投資家は、企業の限られた事業領域で設定されたKPI(重要業績評価指標)によってインパクトを評価することになる(下の図)。

 これに対してPIF原則では、マテリアリティ(重要課題)を参照しながら、企業の取り組みを包括的に捉える。ポジティブな側面を拡大したり、ネガティブな側面を抑制したりするプロジェクトを選定して資金を投入する。投資家は発行体固有のKPIによって、持続的に成長できる企業かどうかを判断しやすくなる。

■ PIF原則は企業の取り組みを包括的に捉える
<span style="font-size: 1.2em;">■ PIF原則は企業の取り組みを包括的に捉える</span>
ICMAのグリーンボンド原則などは事業区分に基づいて対象プロジェクト(資金使途)を選定するのに対し、PIF原則はマテリアリティなどを参照しながら、企業全体がもたらすインパクトを特定してプロジェクトを選定する
(出所:野村証券)
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