聞き手/安達 功(日経BP 総合研究所フェロー)

「次世代デベロッパーへ」という長期ビジョンを達成する鍵を、人材と位置付ける。「従業員の成長と働きがいの向上」をマテリアリティに特定し、能力開発と健康経営を推進する。

日本で最も歴史のある不動産デベロッパーとして、強みは何ですか。

和泉 晃(いずみ・あきら)
和泉 晃(いずみ・あきら)
東京建物 代表取締役専務執行役員
1987年早稲田大学法学部卒、東京建物入社。2015年執行役員都市開発事業部長、17年取締役常務執行役員、21年取締役専務執行役員、23年より現職(写真:吉澤 咲子)

和泉 晃 氏(以下、敬称略) 1896年に創業した当時は不動産自体の近代化が社会の課題だったので、社会課題の解決は創業の志そのものです。

 創業者の安田善次郎が旨とした「お客様第一の精神」は、役職員に深く浸透して定着した企業活動の原点です。1996年、100周年を機に企業理念「信頼を未来へ」を制定しました。こうして培ってきた企業風土が「人間力」を発揮できる人材を生み出すと考えています。

 大量生産の商品とは異なり、不動産には1つとして同じものはありません。不動産開発では、従業員の個の力とチーム力を発揮して事業機会を獲得し、案件ごとにステークホルダー(利害関係者)と良好な関係を築きながら共感を得て事業を推進していく必要があります。価値創造を続けていける人間力の高い人材こそが、競争において優位性をもたらします。

長期ビジョンで目指している企業の姿を教えてください。

和泉 2030年頃を目標に「次世代デベロッパーへ」という長期ビジョンを掲げ、着実に利益成長して連結事業利益1200億円を達成するとともに、様々な社会課題の解決に貢献していきます。事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することで、全てのステークホルダーにとっての「いい会社」を目指します。

 長年の歴史の中で培われてきた共通の価値観を役職員が共有し、一体感と風通しの良さを持った企業風土を維持しながら業容を拡大し、高度な価値創造を実現していく鍵が人的資本です。持続的成長を支える人材の確保と育成、多様性の拡大に力を入れています。新卒採用の拡大とともに、20年頃からキャリア採用も再開しています。

 不動産事業はビルや施設を貸し出すだけでなく、様々なイベントの実施や多様な体験、人々の交流の場としての機能が求められるようになりました。時代の価値観が変わったことで、多様な人材の多様な視点や発想も求められます。

■ ⻑期ビジョンと⼈的資本についての説明図
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人事理念「会社は社員の貢献に応え、社員の成長を会社の成長につなげる」を掲げ、各種施策を通じて人的資本を最大化し、企業価値の向上と長期ビジョン、中期経営計画の達成を目指す
(出所:東京建物)
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