今回は、ジェネリック医薬品大手の沢井製薬が販売後の医薬品に対して不適切な試験を行っていた事案を取り上げる。報告書では、特定の工場における組織風土に問題があったとしている。
事案の概要
沢井製薬が2023年5月に九州工場で製造した医薬品の品質を確認する安定性モニタリングの溶出試験で、従前から試験開始前に新しいカプセルに薬剤を詰め替えた上で試験を実施する不適切な試験を行っていたことが判明した。2023年10月23日に公表された調査報告書では、製造後3年経過後の不適切な試験は2017年以降すべてのロットで行われていたこと、また製造後4年経過後の試験でも2010年、2013年、2014年と規格外の結果に対して「GMP省令」に基づく適切な逸脱管理がされていなかったことが明らかになった。なお、沢井製薬は2023年7月に使用期限内の全ロットを自主回収した。

今回の事案は――販売後の医薬品に対する試験で不正が発生

秋山 ここ数年、ジェネリック医薬業界で不正が多発していて、薬の供給に問題が出ています。そんな状況下で、最大手の沢井製薬でも試験不正があったことが報告されたのが本件です。

浅見 製薬会社で不正が起きて業務が滞ると、最終的に薬がなくなってその薬を必要とする患者さんに迷惑がかかるので、これは重要な問題です。

秋山 そうですね。さて、皆さんすでにご存じだと思いますが、ジェネリック医薬品とは、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後に製造・販売される「先発医薬品と同じ有効成分を同量含んでおり、(先発医薬品と)同等の効き目がある」と認められた医薬品です。一般の薬品においては研究開発が脚光を浴びますが、ジェネリックにおいては製造や品質管理が重要になります。

浅見 今回の事案では、その品質管理が問題となりました。

秋山 本事案を簡単に説明すると、製造販売した後の製品の品質を検査する際に、その薬に使われているカプセルを使ってそのまま試験(溶出試験)をすると経年劣化のために規格外になってしまうので、それとは別の新しいカプセルに付け替えて試験し規格内にしたという、わかりやすい不正になります。

浅見 そうですね。本件は、1回限りではなく以前から繰り返し行われていた不正を、配属されて半年程度の新しい担当者が気づき声を挙げたことから発覚しました。

秋山 製薬は、人の健康に関わる問題でもあるので、しっかりとした製造管理および品質管理の基準(GMP:Good Manufacturing Practice)が設けられており、すべての製薬会社がこれをきちんと守っているはずでした。

浅見 私も、製薬会社なら厳格にGMPを守っているものだと信じていたので、最近の相次ぐ不正に驚いています。

秋山 多くの人が同様の感想をお持ちでしょう。さて本件なのですが、GMPを明らかに逸脱した試験を実施したわけですが、法的にはどう解釈できるのでしょう?

浅見 医薬品の製造と品質管理に関するGMPの基準は、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づいて厚労省がGMP省令で定めています。製造と品質管理がGMP省令に適合しているかどうかは、独立行政法人の医薬品医療機器総合機構(PMDA)と都道府県が調査し、承認します。製薬会社は承認された方法で試験しなければ薬機法違反やGMP省令違反となるおそれがあります。

秋山 薬機法違反となると、販売停止になりますか。

浅見 2020年に承認された方法に違反して製造していた小林化工や2021年の日医工の場合には、それぞれ福井県と富山県から薬機法違反を理由に業務停止処分を受けています。なので、沢井製薬も業務停止処分になる可能性は残ります。

秋山 業務停止の範囲は、その工場や当該の薬品ということではなく、全社の業務そのものが停止になるということを意味するのですか。

浅見 小林化工と日医工の場合には、医薬品製造業と販売業の両方が業務停止になりました。

秋山 業務全面停止ということですね。小林化工と日医工のような大手や他の中堅他社が業務停止になったことが尾を引いて薬の供給不足が起こっていることがわかりました。話を本件に戻すと、報告書では、この不正調査は工場長や管理職の意思ではなく、現場リーダーの勝手な思い込みと誤解によって、カプセルを変えて試験をして規格内として通すという不正な方法が続けられていた、ということになっています。報告書を一読したところ、「現場が独自にそんな重要なことを判断するかな?」と不思議な感じがします。