プロ野球・北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」が初めてのシーズンを終えた。官民連携まちづくりの一大プロジェクトとしても注目を集める中、チームが最下位に低迷する逆境にもかかわらず、球場を含めたエリア「北海道ボールパークFビレッジ」は、年間目標である来場者300万人を開業半年で達成した。2023年10月25日に札幌市で行われた「まちづくりメイヤーズフォーラム」(北海道など主催)では、プロジェクトを牽引してきたファイターズスポーツ&エンターテイメント(S&E)取締役事業統轄本部長の前沢賢氏が登壇し、現時点での手応えや民間企業から見た「まちづくり」の考え方などを率直に語った。その内容をリポートする。

ファイターズスポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長の前沢賢氏(出所:北海道)
ファイターズスポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長の前沢賢氏(出所:北海道)
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観客で埋め尽くされた「エスコンフィールドHOKKAIDO」。プロ野球北海道日本ハムファイターズの本拠地だ(出所:北海道日本ハムファイターズ)
観客で埋め尽くされた「エスコンフィールドHOKKAIDO」。プロ野球北海道日本ハムファイターズの本拠地だ(出所:北海道日本ハムファイターズ)
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 「まちづくりメイヤーズフォーラム」は、北海道が目指すまちづくり「北の住まいるタウン」構想の普及と推進を目的に、道内の市町村長や有識者を招いて事例紹介や意見交換をするもの。第11回となる今年度は「スポーツでつながる魅力ある地域をめざして」をテーマに開催され、会場参加者200人、オンラインでも130人が視聴した。前沢氏はトップバッターとして、「スポーツを核とした街づくりの挑戦」と題する基調講演を行った。

立地の沿線は「宝の山」、北海道ブランドを前面に

 前沢氏はまず冒頭で、同社や球団は「まちづくりをする」のではなく、「まちづくりに寄与する」という立場にあることを強調した。まちづくりは「あくまで行政が、そこに住む人々や働く人々とともに内部・外部の力を使いながら行うもので、我々はその一端を担っている」という立ち位置だ。

 球場を含む約32haの「北海道ボールパークFビレッジ」(以下、Fビレッジ)には、レジャー施設やマンションなどが整備され、近隣には新駅の建設も予定されている。もともと広大な総合運動公園の建設を計画していた北広島市が積極的に誘致した経緯もあり、官民が思いを一つにして、原生林から壮大なまちをつくる希有なプロジェクトとなっている。

 そもそも、なぜ北広島市だったのか。人口190万人の札幌市から6万人足らずの北広島市への移転については、道内の人々からは疑問の声が多かったと前沢氏は打ち明ける。

 しかし、「我々民間の立場で申し上げると、そういったこと(本拠地となる自治体の人口など)はあまり重要でない。それよりも商圏の規模が重要だ」と前沢氏は明かした。北広島市は、北海道の人口約半数に当たる250万人の「札幌圏」に位置している。「だからこそ十二分にこの地で北海道に貢献できると思って決断した」(前沢氏)。

 前沢氏によると、北広島市という立地は「道外や海外のパートナーから『こんな素晴らしい土地はない。この沿線にはいろいろな宝が眠っている』と絶賛された」という。札幌と新千歳空港を結ぶJR線の間に位置し、双方に20分前後でアクセスできるという地域特性が高く評価されたのである。

「北海道ボールパークFビレッジ」の立地(出所:北海道日本ハムファイターズ)
「北海道ボールパークFビレッジ」の立地(出所:北海道日本ハムファイターズ)
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 このようにFビレッジは、官民連携のプロジェクトながら行政区域にとらわれない考え方で進められてきた。球場名に市町村名ではなく「北海道」を入れていることもその表れだ。「我々は北広島市ではなく、北海道という名前とブランドを使って売っていく」と、前沢氏の説明は明快だった。