今回で11回目の開催となった「まちづくりメイヤーズフォーラム」(2023年10月25日、北海道など主催)。今回はスポーツとまちづくりがテーマだ。パネルディスカッション「スポーツでつながる魅力ある地域をめざして」では、ボールパーク構想をけん引してきたファイターズスポーツ&エンターテイメント(S&E)取締役事業統轄本部長の前沢賢氏と、スポーツを通じたまちづくりに取り組む道内3自治体(名寄市、遠軽町、栗山町)の首長を迎えて意見交換が行われた。

登壇者

前沢 賢(まえざわ・けん)氏
 ファイターズ スポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長
加藤 剛士(かとう・たけし)氏
 名寄市長
佐々木 修一(ささき・しゅういち)氏
 遠軽町長
佐々木 学(ささき・まなぶ)氏
 栗山町長
瀬戸口 剛(せとぐち・つよし)氏(コーディネーター)
 北海道大学大学院工学研究院教授

「まちづくりメイヤーズフォーラム」のパネルディスカッションの様子(出所:北海道)
「まちづくりメイヤーズフォーラム」のパネルディスカッションの様子(出所:北海道)
[画像のクリックで拡大表示]

 「まちづくりメイヤーズフォーラム」は、北海道が目指すまちづくり「北の住まいるタウン」構想の普及と推進を目的に、道内の市町村長や有識者を招いて事例紹介や意見交換をするもの。第11回となる今年度はスポーツとまちづくりをテーマに開催され、会場参加者200人、オンラインでも130人が視聴した。

 パネルディスカッションは、前沢氏のほか、加藤剛士・名寄市長、佐々木修一・遠軽町長、佐々木学・栗山町長をパネリストに迎え、北海道大学大学院工学研究院の瀬戸口剛教授がコーディネーターを務めた。

若い世代に委ねる Fビレッジの「まちづくり」将来像

 北海道北広島市で32㏊もの原生林を開発し、官民が連携するまちづくりとしても注目される「北海道ボールパークFビレッジ」。その完成度や将来像を改めて問われた前沢氏は、「新球場の完成度は9割程度だが、開業後にいろいろ改善すべき点があった」として、既に一部を取り壊して改修していることを明かした。

ファイターズスポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長の前沢賢氏(出所:北海道)
ファイターズスポーツ&エンターテイメント取締役事業統轄本部長の前沢賢氏(出所:北海道)
[画像のクリックで拡大表示]

 一方、グランピング施設や子ども向けの遊び場、認定こども園、農業の体験学習施設、マンションなどが整備されるFビレッジについては「まだ30%くらいの成熟度」とし、「(プロジェクトがスタートした)2015年当時に考えていたことは確実に実現できているが、2030年、2040年にどうなっているかは、もはやそこまで想像できていない。想像できていない人間が意思決定に加わるべきじゃないと考えているので、当社で言うと20歳代、30歳代の人間が決めるべきと割り切っている」と話すにとどめた。

「北海道ボールパークFビレッジ」と、その中核となる新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」(出所:北海道日本ハムファイターズ)
「北海道ボールパークFビレッジ」と、その中核となる新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」(出所:北海道日本ハムファイターズ)
[画像のクリックで拡大表示]

部活動や運動会で地域を活性化

 少子高齢化が進む中、生徒数減少に直面する地元高校の活性化策として、遠軽町では野球部、ラグビー部、栗山町では女子硬式野球部の支援について説明した。名寄市は市民参加の「街なか運動会」の取り組みなどを紹介した。

遠軽町長の佐々木修一氏(出所:北海道)
遠軽町長の佐々木修一氏(出所:北海道)
[画像のクリックで拡大表示]
栗山町長の佐々木学氏(出所:北海道)
栗山町長の佐々木学氏(出所:北海道)
[画像のクリックで拡大表示]
名寄市長の加藤剛士氏(出所:北海道)
名寄市長の加藤剛士氏(出所:北海道)
[画像のクリックで拡大表示]

 人口約2万人の遠軽町唯一の高校である遠軽高校。野球部は2013年春に「21世紀枠」で甲子園初出場、初勝利を挙げ、今も約80人の部員が集まる。もともと吹奏楽部が有名で町外から多くの生徒が来ていたことから、高校存続のため野球部、ラグビー部でも同様に生徒を集めるようになったという。遠軽高校は道立ながら、町が施設整備や下宿生への助成、スカウト活動など積極的に支援している。

 「医療と教育がないところに若い人は来ない」という信念のもと、その2つに力を入れる佐々木修一町長は「政策目標としては生徒数の維持だけでいいが、強くなければ人も集まらず、町民の方々もどんどん熱が入って一生懸命に応援するようになり今に至っている」と説明した。

 人口約1万人の栗山町では3年間の議論の末、定員割れが続いていた町内唯一の栗山高校に女子硬式野球部を発足させた。町職員として採用し、監督に迎えたのは、元日本代表チーム主将の金由起子氏。2022年4月に部員2人で同好会として活動を始めたが、2023年4月には新1年生14人が入部して部活動に昇格、全国大会にも出場した。「監督のもとで野球がやりたい」と道外から来た部員も2人おり、町が用意した女子寮で全部員が生活している。

 道内の公立高では初の女子硬式野球部は、全国的に競技人口が増えているスポーツだけに反響は大きく、今年9月の部活動体験会には道内外から30人もの参加があった。佐々木学町長は、部員たちが住む女子寮に町民たちからの差し入れなどが絶えない現状を紹介し、「やはり若い方々が一生懸命に頑張る姿は町の人の気持ちを一つにし、動かすということを実感している」と語った。

 名寄市の加藤市長はスポーツで一体感を得られた事例として、2020年に初開催した「街なか運動会」の経験を挙げた。コロナ禍で学校の運動会等が軒並み中止になる中、商店街の道路を封鎖して開いた運動会には「とんでもない数の人」が集まったといい、「子どもたちが、これだけスポーツを通じてつながりを求めていたのかと驚いた。そんな子どもたちの姿を見て大人たちも喜んでいた。スポーツがまちづくりにものすごく効果があるということを改めて感じている」と述べた。

 1年のうち約5カ月は雪に覆われ、昔から「雪質日本一」を掲げる名寄市では、その自然環境とカーリング、スキー競技(アルペン、ジャンプ、クロスカントリー)ができる施設を生かして大会や合宿誘致の実績を伸ばすとともに、スポーツによるまちづくりを推進している。同市が目指すのは、フィンランドの人口1万5000人ほどの市にある「ボカティ・トレーニングセンター」。公的な資金も投入しながら民間のスポーツ団体が運営するセンターは、夏場でもトレーニングできる施設、大学と連携した医科学的なサポートなどハード、ソフト両面で充実した環境を整え、年間約100万人が訪れるという。