ナッジなど人々の行動変容を促す手法を用いて、歩きスマホの防止、固定資産税の口座振替勧奨、大腸がん検診受診の行動促進など様々な分野で成果を上げる自治体が増えている。5人1組でチームとなった利用者が写真や歩数などを投稿、励まし合いながら行動変容を促し、高齢者のフレイル(虚弱)予防などで成果を挙げているスマホアプリ「みんチャレ」を開発したエーテンラボ代表取締役の長坂剛氏にアプリを使った取り組みについて聞いた。

エーテンラボの長坂剛代表取締役(写真:鈴木 正美)
エーテンラボの長坂剛代表取締役(写真:鈴木 正美)
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まずは「みんチャレ」アプリとはどのようなものか、多くの自治体が同アプリを使って実施しているフレイル予防事業とは何なのかを教えてください。

 「みんチャレ」は、2015年に開発、運営を始めたアプリです。一言で言うと、「5人で励まし合いながら楽しく続けることを目的とした習慣化アプリ」で、現在、130万人のユーザーを獲得しています。

 ダイエット、勉強、運動、禁煙、趣味など共通の目標を持った匿名の5人でチームをつくり、日々の取り組みをチャットに報告して励まし合うことによって楽しく行動変容に取り組みます。2019年、2型糖尿病・予備軍を対象に神奈川県と行った生活習慣改善の効果検証によれば、「みんチャレ」を活用したグループにおけるウオーキングの目標歩数達成率は、非使用群の約2倍という結果が出ています。

行動変容への貢献で評価が高い「みんチャレ」は、過去3度「Google Play ベストアプリ」に選出されている(画像提供:エーテンラボ)
行動変容への貢献で評価が高い「みんチャレ」は、過去3度「Google Play ベストアプリ」に選出されている(画像提供:エーテンラボ)
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 このアプリを使って、自治体のフレイル予防や介護予防の施策の支援を行うのが、当社の「」です。高齢者がオンラインでつながりを持ちながら、自分で運動を継続できる仕組みを構築・提供するというものです(図表1)。

高齢者とスマホは相性がいいとは言えないのでは?

 高齢者がアプリを使用できるように、「みんチャレの使い方講座」を実施します。参加者数や歩数などのデータを自治体に提供します。フレイル予防のために運動などのイベントを実施する自治体は多いものですが、実際にそれがどんな行動変容に結び付いているのかは見えづらいのが実態です。効果を定量的に把握できるのも「みんチャレ」のメリットです。2021年度に東京都府中市で本格展開を始めましたが、神奈川県横須賀市や同綾瀬市などもこれに続き、これまで10以上の自治体がフレイル予防事業を行っています(図表2)。2023度中には20自治体、2024年度には60自治体への展開を目指しています。

図表1●「みんチャレ」を活用したフレイル予防事業の概要
図表1●「みんチャレ」を活用したフレイル予防事業の概要
5人1組のチームとなった高齢者が、「みんチャレ」のウオーキングチームに参加。毎日仲間と会話しながら歩数や写真を共有することで、楽しみながらフレイル予防行動の継続を目指す(画像提供:エーテンラボ)
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図表2●「みんチャレ」を活用した「フレイル予防事業」の実績
自治体名 実施時期 内容
1 東京都府中市 2021年度〜 介護予防推進センター・地域包括支援センター・地域の学生団体等と連携した取り組み
2 神奈川県横須賀市 2022年度〜 市が主体の事業
3 神奈川県綾瀬市 2022年度〜 地域包括支援センター・社会福祉協議会等と連携した取り組み
4 神奈川県厚木市 2022年度〜 市が主体の事業
5 神奈川県藤沢市 2022年度〜 慶應義塾大学との臨床研究、活動量変化の効果測定
6 堺市立病院機構 2022年度〜 市立病院機構との臨床研究、堺市が寄付プロジェクトで協力
7 徳島県鳴門市 2022年度〜 ICTを活用したフレイル予防事業
8 神奈川県伊勢原市 2023年度〜 老人クラブ向けのデジタルデバイド解消およびフレイル予防事業
9 愛知県豊橋市 2023年度〜 通いの場チャレンジ、一般市民向けチャレンジ
10 東京都墨田区 2022年度〜 老人クラブ向けのスマホ教室と連携した取り組み
11 福井県 2021年度 県内大学と連携した家族チームでのフレイル予防の取り組み
12 東京都西東京市 2021年度 フレイルチェック参加者向けの取り組み
13 宮城県仙台市 2021年度 地域包括支援センターと連携した取り組み
これまで参加した自治体は13自治体(2023年6月時点)(出所:エーテンラボ)