現在の中央集権型ネットワークに代わる分散型ネットワークとして注目を集める「Web3」。ブロックチェーン、暗号資産(仮想通貨)、分散型自律組織のDAO(Decentralized Autonomous Organization)、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)など数々の新技術、新概念を内包する。構造のわかりにくさに加え、法規制が整備されていないこともあり、現時点で一般的に普及しているとは言い難い。だがその中でもNFTは一歩先んじて盛り上がりを見せている。

NFTではブロックチェーンを用いて、デジタルデータに唯一無二の資産価値を証明する。その特性からデジタルアート、動画や画像、テキストなどのデジタルコンテンツを中心に市場が形成され、2021年には米Twitter(現X)創業者、ジャック・ドーシー氏の初ツイートが約3億円で落札されるなど大きな話題を呼んだ。日本国内でも売買取引を行なうマーケットプレイスが存在し、楽天、LINEヤフー、GMOグループなどが参入している。

このNFTとふるさと納税をかけあわせた新事業を立ち上げたのがスタートアップの「あるやうむ」である。あるやうむとはアラビア語で「今日」を意味し、「今日、今すぐにチャレンジをしたい自治体にNFTを提供して地域を活性化させたい」との思いを込めている。

東京出身の少年が地方創生に目覚めるまで

2020年11月に創業したあるやうむは北海道札幌市に本社を置くが、フルリモート、フルフレックス体制のため社員は全国各地に分散している。こうしたワークスタイルも2023年ならではだ。代表を務める畠中氏自身、東京育ちでありながら京都大学を経て北海道大学大学院に進学した経歴を持つ。

東京・渋谷にある中高一貫進学校で学んだ畠中氏は、周囲の人たちの優秀さに打ちのめされて挫折を味わった。そこで大学進学を機に東京からの脱出を決意。憧れのまちだった札幌市に住むために北海道大学を希望したが、両親の反対でやむなく京都大学総合人間学部に進学した。

あるやうむ代表の畠中博晶氏(出所:あるやうむ)
あるやうむ代表の畠中博晶氏
(出所:あるやうむ)

京大時代に暗号資産の取り引きを始めた畠中氏はブロックチェーンの世界にのめり込み、暗号資産の裁定取引で得た資金をもとに札幌市へと移り住んだ。「暗号資産の取り引きは私にとって人生の転換点。人生で初めて金銭的な成功を得ることができました」と畠中氏は振り返る。一方、京大、北大と国内屈指の名門校を渡り歩く中で痛感したのは「優秀な人ほど東京に出てしまう現実」だったと話す。

「東京から外に出て、改めて東京都市圏3500万人が生み出すパワーの凄まじさを感じました。頭の良い人たちは大学進学の時点で早々と東京に出てしまって戻らないですし、地方で最高峰の学府に進学しても、結局は医師、都道府県職員、教師、地元の名門企業など将来の選択肢が限定されています。地方が疲弊してしまうのは、シンプルにお金を稼ぐ手段がないからなんです。私は外側から入ってきた人間なので、しがらみを外れて自由な視点で物事を捉えることができます。その視点から地域を活性化する事業を興したいと考えて起業に至りました」(畠中氏)

あるやうむを経営する傍ら、畠中氏は日本円のステーブルコイン※を発行するJPYCに1年ほど入社。同社で会社経営のノウハウを学び、フルリモートでも組織運営ができる自信を身につけた。

JPYC代表取締役の岡部典孝氏(左)と畠中氏(出所:あるやうむ)
JPYC代表取締役の岡部典孝氏(左)と畠中氏
(出所:あるやうむ)

「JPYCは性別、年齢、学歴、地域にこだわらないフラットな組織でした。驚いたのは地方在住スタッフのほうが、コミットメントが高かったこと。私が目指す地方分散型の民主化が可能であることを知り、JPYCで得た経験をもとに東京の一極集中を止める手段としてNFTを軸にしたビジネスを思いつきました。これなら場所は関係ありませんから」(畠中氏)

※ステーブルコイン:価格が安定しない暗号資産を実用化すべく、ドルや円などの法定通貨と連動するように設計された暗号資産の一種。JPYCは日本初の円に連動した同名のステーブルコインを発行する