「iPhone」の安全を支えてきた「App Store」(右)。サイドローディングは、その信頼を揺るがしかねない
「iPhone」の安全を支えてきた「App Store」(右)。サイドローディングは、その信頼を揺るがしかねない

 日本政府による「モバイル・エコシステムに関する競争評価」についてご存じでしょうか。子どもたちも利用する「iPhone」や「iPad」にリスクが生じる法案が可決されるかもしれません。

 スマホやタブレットといったモバイル端末は、モバイルOS、Webブラウザー/アプリストア、Webサービス/アプリの3つのレイヤーで構成されています。土台となるモバイルOSは、iOS(アップル)とAndroid(グーグル)のほぼ独占状態となっています。政府は、両社のモバイルエコシステムが他社の参入を難しくしており、デジタル市場の競争関係における構造的な課題だとして、デジタル市場競争本部を設置して競争評価を行っています。

 2023年6月に提示された「モバイル・エコシステムに関する競争評価最終報告(案)」では、アプリストア関係の対応として、「アプリ代替流通経路の容認を求めること」を挙げています。「App Store」や「Playストア」以外のアプリストアやWebサイトからもアプリをダウンロードできるように義務付ける方針です。これは一般的に、サイドローディングと呼ばれる仕組みです。Androidはもともとサイドローディングに対応しているため、実質的に政府が求めているのはiOSでの対応です。

※「モバイル・エコシステムに関する競争評価最終報告(案)」()

 この最終報告(案)に対し、アップルは以下のような公式声明を出しています。「Appleは、私たちが事業を展開するすべての市場において、イノベーション、雇用創出、競争のエンジンとなっていることを誇りに思います。日本だけでも、iOSアプリの経済は約100万人の雇用を支え、大小のデベロッパーが世界中の顧客にアプローチすることを可能にしています。私たちは、本報告書に記載された多くの提言に謹んで反対します。これらの提言は、Appleのエコシステムがアプリ開発者の方々に利益をもたらし、消費者にプライバシーとセキュリティを保護する選択肢を提供しているアップルの仕組みを危機的な状況に追い込むものです。私たちは、これらの懸念に対処するため、これからも建設的にかかわり続けていきます」。

子どもの安全を第一に

 App Storeのアプリは、アップルによって厳正に審査されています。そのためアプリがiPhoneやiPadに対して不正な動きをすることはなく、セキュリティが守られます。また、アプリストアが一元化されているため、ユーザーはレビューを見てアプリの内容を判断できます。

 しかし、サイドローディングにより判断がつかず、怪しいアプリをインストールしてしまった場合、常に持ち歩くモバイル端末から継続的に情報を取得されたり、保存している個人情報を盗まれたりする危険性があります。GIGAスクール構想でiPadを配布している学校でもサイドローディング対応が必要となるかもしれません。

 最終報告(案)にはパブリックコメントが全559件寄せられています。アプリ代替流通経路により、ペアレンタルコントロールやフィルタリングで制御できない抜け穴ができてしまうのではないか、青少年保護の仕組みがますます分かりづらくなるなどの懸念が見られます。

 これまで、「安全だから」という理由でiPhoneやiPadを持たせていたご家庭も多いでしょう。規制を一度緩めてしまえば、元に戻すことはできません。政府には国民に寄り添った対応を求めます。

出典:日経パソコン、2023年12月11日号、同名コラムより
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。